基礎知識

日本酒はどう造られるのか|麹と三段仕込みの役割

公開:2026/08/30

ワインはブドウを潰して置いておけば酒になります。ブドウにはもともと糖が入っているからです。

米にはそれがありません。米のデンプンは、そのままでは酵母が食べられない形をしています。だれかが先に糖へ変えてやる必要がある。その役目を担うのが麹です。

麹が糖を作る

蒸した米にニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae、黄麹菌)を繁殖させたものが米麹です。 麹菌は生きていくためにデンプンを分解する酵素を出します。この酵素がデンプンをブドウ糖に変えます。

麹づくりは製麹(せいきく)と呼ばれ、約2日かけて行われます。 温度と湿度を細かく管理する必要があり、蔵人が夜通し様子を見る工程です。 「一麹、二酛、三造り」という言葉があり、麹が最も重要とされてきました。

糖化と発酵が同時に進む

ここが日本酒の特殊なところです。

ビールの場合、まず麦芽の酵素で糖を作り、その液を煮沸して酵母を加える、という順番になります。 糖化と発酵が別々の工程です。

日本酒では、麹による糖化と酵母による発酵が同じタンクの中で同時に進みます。 これを並行複発酵といい、世界的にも珍しい方式です。

この方式の利点は、糖が一気に溜まらないことです。 糖濃度が高すぎると酵母は働きにくくなりますが、少しずつ供給されるため発酵が長く続きます。 結果として、醸造酒としては高い18〜20度近くまでアルコールが上がります。日本酒のアルコール度数が他の醸造酒より高いのは、この仕組みによるものです。

三段仕込み

酒母(酵母を大量に増やしたスターター)ができたら、いよいよ本仕込みです。 ここで米・麹・水を一度に全部入れるのではなく、4日かけて3回に分けて加えていきます。

日程工程内容
1日目初添(はつぞえ)酒母に少量を加える
2日目踊り(おどり)何も加えず、酵母を増やす日
3日目仲添(なかぞえ)量を増やして加える
4日目留添(とめぞえ)残りを加えて仕込み完了

分けて加える理由は、酵母の密度を保つためです。 一度に大量の水と米を入れると酵母が薄まり、雑菌に負けやすくなります。 段階的に増やすことで、酵母が優勢な状態を維持したまま規模を拡大できます。

2日目に何もしない「踊り」という工程があるのが面白いところで、 ここで酵母をしっかり増やしてから次に進みます。

もろみから酒へ

仕込みが終わると、もろみは20〜30日ほどかけて発酵します。 吟醸造りではこれを低温で行い、期間はさらに長くなります。 時間をかけるほど酵母が作る香り成分が酒に残りやすくなります。

発酵が終わったら搾ります。この工程を上槽(じょうそう)といい、 搾る順に「あらばしり」「中取り」「責め」と呼び分けられます。 中取りが最もバランスが良いとされ、ラベルに書かれることがあります。

搾ったあとは、濾過・火入れ・貯蔵・加水・瓶詰めと続きます。 このどれを省くかで「無濾過」「生酒」「原酒」といった表示になります。 詳しくは日本酒ラベルの読み方にまとめました。

酒母のつくり方の違いは生酛・山廃・速醸の違い、 削る工程については精米歩合は味をどこまで決めるのかをご覧ください。

味わいから銘柄を探すなら、トップページの検索が便利です。香りの強さや甘辛をレーダーチャートで比べられます。

この記事を書いた人

メカとら人事 × DX / 日本酒好き

人事の仕事のかたわらデータ分析とDXに取り組んでいます。日本酒好きが高じて、 7,900件を超える銘柄データベースを個人で作りました。旅先の酒屋や市場で地酒を買うのが趣味です。

運営者情報X @xORMRha7Ck16551note