日本酒ラベルの読み方|無濾過生原酒、中取り、しぼりたての意味
公開:2026/07/27
「無濾過生原酒 中取り 山田錦 精米歩合50% 協会9号酵母」。 こういうラベルを前にすると呪文のように見えますが、 ひとつひとつは造りの工程を説明しているだけで、意味が分かれば味の予想がつきます。
純米や吟醸といった特定名称については別の記事で書いたので、ここではそれ以外の言葉を扱います。 個人的には、この「それ以外」のほうが味への影響は大きいと思っています。
原酒 ― 水を足していない
搾ったままの酒はアルコール度数が18〜20度ほどあります。 通常はここに水を加えて15度前後に調整してから出荷する。この加水をしていないものが原酒です。
度数が高いぶん味は濃く、口に含んだときの圧が強い。 よくできた原酒は、濃いのに重たくならず、旨みがぎゅっと詰まった感じがします。 度数が気になるならロックにしても崩れにくいのが原酒の利点で、 氷が溶けていく過程がちょうど加水の代わりになります。
無濾過 ― 濾していない
搾ったあとの酒には微細な成分が残っていて、そのままだと色がつき、味も落ち着きません。 これを活性炭などで濾過して整えるのが一般的な工程です。
無濾過はこれを省いたもの。うっすら黄金がかった色をしていて、味に膨らみと厚みがあります。 雑味と紙一重の部分もあるので、蔵の技術がはっきり出るところでもあります。
よく見かける「無濾過生原酒」は、濾過なし・火入れなし・加水なしの三重奏。 搾ったそのままに最も近い状態で、味の情報量が多い。 日本酒の濃い側を体験したいならこれを選ぶと分かりやすいです。ただし要冷蔵で、開栓後は早めに飲みきる必要があります。
荒走り・中取り・責め ― 搾りのどの部分か
もろみを搾ると、出てくる順番で性質が変わります。それぞれに名前が付いています。
| 呼び名 | タイミング | 特徴 |
|---|---|---|
| 荒走り(あらばしり) | 最初 | 圧をかけずに自然に出る。やや荒々しく、香り高い |
| 中取り(なかどり)/中汲み | 中盤 | 最も安定して味が整う。品評会にはここが使われる |
| 責め(せめ) | 最後 | 強く圧をかけて搾る。雑味も出るが力強い |
「中取り」と書かれていれば、いちばんおいしい部分だけを抜き出したものということです。 当然量は限られるので価格は上がります。 荒走りはガス感が残っていることも多く、フレッシュさを楽しむタイプ。
原料米 ― 何の米で造ったか
食用米ではなく、酒造りに向いた「酒造好適米」が使われます。 粒が大きく、中心に心白(しんぱく)という白い部分があるのが特徴で、 ここに麹菌が入り込みやすい。
- 山田錦 ― 酒米の王様。バランスが良く、大吟醸に多用される
- 五百万石 ― 新潟を中心に。すっきり淡麗な酒質になりやすい
- 美山錦 ― 長野・東北。軽快でシャープ
- 雄町(おまち) ― 岡山中心。濃醇で独特の存在感。愛好家が多い
雄町には「オマチスト」と呼ばれる熱心なファンがいるほどで、 飲み比べると米の違いが分かりやすい。同じ蔵の同じ造りで米だけ変えた酒があれば、 違いを体感する教材としてよくできています。
酵母 ― 香りの方向を決める
アルコールと香りを生むのが酵母です。番号で示されることが多い。
- 協会7号 ― 穏やかな香り。オールラウンド
- 協会9号 ― 吟醸酒の定番。華やかで上品
- 協会1801号 ― カプロン酸エチルが多く、りんご様の香りが強い
各県が独自に開発した酵母もあり、地域の個性を出す手段になっています。 香りが華やかな酒を探しているなら1801号系、 食中酒として穏やかなものがいいなら7号系、といった選び方も成り立ちます。
その他、よく見る言葉
- しぼりたて ― 搾ってすぐ出荷。冬から春の季節商品
- ひやおろし ― 夏を越して秋に出す。丸みがある
- 生酛・山廃 ― 乳酸を人工添加せず育てる伝統製法。酸が高く燗に向く
- にごり酒 ― もろみを粗く濾したもの。白く濁り、甘みが強いものが多い
- おりがらみ ― 澱を少し残したもの。うっすら濁る
データで見る、これらの言葉の出現率
当サイトに登録している7,900件超の銘柄を集計すると、 こうした表記がどのくらいの割合で使われているかが見えてきます。
| 表記 | 該当件数 |
|---|---|
| 生(生酒・生貯蔵・生詰めなど) | 1,442件 |
| 原酒 | 1,307件 |
| 無濾過 | 683件 |
| にごり | 305件 |
| 山廃 | 212件 |
| 生酛 | 157件 |
| ひやおろし | 39件 |
「生」と「原酒」が突出しています。 この2つはフレッシュさや味の濃さを求める流れと直結していて、 近年の日本酒がどちらを向いているかが数字に出ている感じがします。
一方、生酛や山廃は合わせても370件ほど。 手間がかかる伝統製法なので数は限られますが、 だからこそ見つけたら試す価値があります。 ひやおろしが39件と少ないのは、秋限定の季節商品だからです。
精米歩合の分布
精米歩合が判明している7,770件を区分すると、次のようになりました。
- 40%以下 ― 1,069件(13.8%)
- 41〜50% ― 1,648件(21.2%)
- 51〜60% ― 3,321件(42.7%)
- 61〜70% ― 1,657件(21.3%)
- 71%以上 ― 75件(1.0%)
51〜60%の帯に4割以上が集中しています。 吟醸を名乗れる境界が60%以下なので、 そこを狙って設計されている銘柄が多いということでしょう。 50%以下、つまり大吟醸を名乗れる水準も合わせて35%あり、 高精白の酒が特別なものではなくなっていることが分かります。
まずどこを見るか
全部を追う必要はありません。慣れないうちは「特定名称」「原酒かどうか」「生かどうか」の3点だけ見れば、味の方向はだいたい絞れます。
原酒で生なら濃くてフレッシュ、加水した火入れなら穏やかで安定。 そこに精米歩合の数字を足せば、輪郭はかなり見えてきます。 あとは実際に飲んで、自分の好みがどのあたりにあるかを確かめていくのが早い。
当サイトではこうした要素を含めて銘柄を検索できます。気になった言葉があれば、それを含む銘柄を探してみてください。
味わいから銘柄を探すなら、トップページの検索が便利です。香りの強さや甘辛をレーダーチャートで比べられます。
この記事を書いた人
メカとら人事 × DX / 日本酒好き
人事の仕事のかたわらデータ分析とDXに取り組んでいます。日本酒好きが高じて、 7,900件を超える銘柄データベースを個人で作りました。旅先の酒屋や市場で地酒を買うのが趣味です。