基礎知識

純米・吟醸・大吟醸の違い|ラベルの言葉は2つの軸で読み解ける

公開:2026/07/27

酒屋の棚の前で、「純米大吟醸」「特別本醸造」といった見慣れない言葉に囲まれて、 結局いつもと同じ一本を持ってレジに向かう。日本酒を飲みはじめた頃、私はこれを何度も繰り返していました。

やっかいなのは、これらの名前が味の説明ではないことです。 「大吟醸」と書いてあっても、それだけでは甘いのか辛いのか、香りが華やかなのか穏やかなのかは分かりません。 名前が示しているのは、原料と製法が満たしている条件だけです。

ただ、条件が分かれば傾向は読めます。そして覚えることは、思っているより少ない。軸は2つしかありません。

軸1:醸造アルコールを使っているか

名前に「純米」が付くかどうかは、この一点で決まります。 米・米麹・水だけで造ったものが純米酒。仕込みの最後に醸造アルコールを加えたものが、 本醸造酒や(純米の付かない)吟醸酒です。

ここで言う醸造アルコールは、主にサトウキビの糖蜜を発酵させて蒸留した、ほぼ無味無臭のアルコールです。 添加できる量にも上限があり、白米の重量の10%以下と決められています。 水で薄めて量を増やすようなものではありません。

軸2:米をどれだけ削ったか

もうひとつが精米歩合です。玄米を削ったあとに残った割合を指すので、 数字が小さいほどよく削っていることになります。精米歩合50%なら、外側を半分削り落としたということです。

なぜ削るのか。米の外側にはタンパク質や脂質が多く含まれていて、これが雑味や重さのもとになります。 中心に近づくほどでんぷん質の純度が上がり、澄んだ酒になりやすい。 削る量が増えれば、それだけ原料も手間も時間もかかります。

この精米歩合が60%以下で、かつ低温でゆっくり発酵させる「吟醸造り」をしたものが吟醸酒。 50%以下まで削ったものが大吟醸酒です。

2つの軸を掛け合わせると8種類になる

あとは組み合わせるだけです。国税庁が定める「特定名称酒」は、次の8つに整理されています。

名称精米歩合醸造アルコール
純米酒規定なし使わない
特別純米酒60%以下、または特別な製造方法使わない
純米吟醸酒60%以下使わない
純米大吟醸酒50%以下使わない
本醸造酒70%以下使う
特別本醸造酒60%以下、または特別な製造方法使う
吟醸酒60%以下使う
大吟醸酒50%以下使う

名前の頭に「純米」が付いていればアルコール無添加、付いていなければ添加あり。 「吟醸」なら60%以下、「大吟醸」なら50%以下。 この読み方さえ入れておけば、初見のラベルでもだいたいの素性がつかめます。

なお、純米酒の精米歩合に規定がないのは、2004年の基準改正で「70%以下」という条件が外されたためです。 あまり削らずに米の味を前に出す純米酒も、しっかり削った純米酒も、どちらも成立します。

「特別」とは何なのか

特別純米酒・特別本醸造酒の「特別」は、少しあいまいな枠です。 精米歩合60%以下という条件を満たすか、あるいは蔵が「特別な製造方法」と説明できれば名乗れます。 兵庫県産の山田錦を全量使った、木桶で仕込んだ、といった内容がここに入ります。 何が特別なのかはラベルの裏や蔵のサイトに書かれていることが多いので、気になったら確認してみてください。

醸造アルコールは「混ぜ物」ではない

純米酒だけが本物で、アルコール添加は安酒――そういう見方をされることが今でもあります。 これは戦後の米不足の時代に、大量に水とアルコールで薄めた酒が出回った歴史を引きずったものです。

現在の添加は目的がまったく違います。香りの成分はアルコールに溶けやすい性質があるため、 少量加えることで華やかな香りが立ちやすくなる。さらに後味が軽く締まり、いわゆる淡麗な口当たりになります。 全国新酒鑑評会で高い評価を得る大吟醸の多くがアルコール添加であることからも、 品質を落とすための手段ではないことが分かります。

純米は米の旨みや厚みが出やすく、燗にしたときに膨らむ。 アルコール添加は香りが伸びてキレが出る。優劣ではなく、方向性の違いです。

吟醸造りが生む「吟醸香」

吟醸酒の特徴としてよく挙げられる、りんごやメロン、バナナのような香り。 これは果物を入れているわけではなく、低温でじっくり発酵させる過程で酵母が生み出す成分です。

  • カプロン酸エチル ― りんごや洋なしを思わせる香り
  • 酢酸イソアミル ― バナナやメロンに近い香り

どちらが強く出るかは酵母の種類や仕込みの温度で変わります。 この香りは温めると飛んでしまうので、吟醸系はよく冷やして飲むのが基本になります (温度による味の変化はこちら)。

「大吟醸が一番おいしい」とは限らない

価格は手間に比例します。よく削るほど原料も時間もかかるので、大吟醸は高くなる。 ただし、価格は好みには比例しません

大吟醸は雑味を削ぎ落とした澄んだ味わいですが、その分だけ米の旨みや厚みは控えめになります。 料理と合わせる場面で言えば、香りの強い吟醸系は刺身や白身の料理には寄り添いやすい一方、 味の濃い煮物や揚げ物には少し線が細く感じることがあります。 こってりした料理や、燗にしてじっくり飲みたい日なら、精米歩合70%前後の純米酒のほうが満足度が高い、 ということは珍しくありません。

贈り物に選ぶなら大吟醸は間違いが少ない。けれど自分用の一本としては、 その日に何を食べるかから逆算したほうが、当たりを引きやすいと思います。

結局、どう選べばいいか

目的別に整理すると、だいたいこの3パターンに収まります。

  • 日本酒を飲み慣れていない人と飲む ― 純米吟醸か大吟醸を、よく冷やして。香りが分かりやすく、口当たりも軽い
  • 料理と一緒にじっくり飲む ― 純米酒。常温から燗まで温度の幅が広く、味の濃い料理にも負けない
  • すっきり飲みたい、価格も抑えたい ― 本醸造。キレがあり、冷やでも燗でも扱いやすい

料理から選びたいときは日本酒と料理の合わせ方、ラベルの数字が気になるときは日本酒度と酸度の読み方も参考になると思います。

とはいえ、同じ「純米吟醸」でも蔵によって味はまるで違います。 分類はあくまで出発点で、最後は個々の銘柄を見るしかありません。 当サイトでは、甘辛や香りの強さをレーダーチャートにして比べられるようにしているので、気になる分類の中から好みに近いものを探してみてください。純米吟醸の一覧純米酒の一覧から眺めてみるのもおすすめです。

味わいから銘柄を探すなら、トップページの検索が便利です。香りの強さや甘辛をレーダーチャートで比べられます。

この記事を書いた人

メカとら人事 × DX / 日本酒好き

人事の仕事のかたわらデータ分析とDXに取り組んでいます。日本酒好きが高じて、 7,900件を超える銘柄データベースを個人で作りました。旅先の酒屋や市場で地酒を買うのが趣味です。

運営者情報X @xORMRha7Ck16551note